美術館・展覧会で見かける版画用語集—プレートマーク・見当・裏彩色とは

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美術館や展覧会で版画作品を見ていると、「プレートマーク」「見当」「裏彩色」など、少し聞き慣れない言葉を目にすることがありますよね。これらの用語を知っていると、作品の見どころや作家の技法がぐっと身近に感じられます。

今回は、そんな版画鑑賞をもっと楽しむために、よく登場する専門用語をやさしく解説していきます。

はじめに:版画をもっと楽しむために

版画は、絵画とはまた違った魅力を持つ芸術表現です。一見すると同じように見える作品でも、実は印刷技法や版の使い方でまったく印象が変わります。美術館や展覧会では、作品の横に専門用語が添えられていることも多く、それを理解するだけで「なるほど!」と感動が深まる瞬間があります。

プレートマークとは?—版の跡が生む独特の味わい

プレートマークとは、銅版画などの印刷でできる、紙の表面に残る「版の跡」のことを指します。
作品の周囲にうっすらと凹んだ線が見えることがありますが、それがプレートマークです。

この跡は、版をプレス機で強く押し当てて印刷することで生まれます。
機械的なものではなく、版画特有の温かみを感じさせる部分でもあります。

つまり、プレートマークが見えるということは、作家が実際に版を使って刷った“オリジナル版画”である証でもあるのです。

見当とは?—正確な位置合わせのための工夫

見当(けんとう)とは、版画を刷る際に使う位置合わせの目印です。
特に木版画や多色刷りの作品では、色ごとに版を重ねるため、わずかなズレが大きな違いを生みます。

このズレを防ぐために、紙や版の端に「見当」と呼ばれる小さな印や線を設け、位置を合わせていくのです。

見当の精度が高いほど、色の重なりや形の美しさが際立ちます。
江戸時代の浮世絵職人たちも、この技法を駆使して見事な多色木版を生み出していました。

裏彩色とは?—紙の裏から彩る繊細な技法

裏彩色(うらさいしょく)とは、紙の裏側から色を塗ることで柔らかく色味を出す技法です。
光を通してほんのりと発色するため、表から見ると淡く上品な色合いに仕上がります。

特に日本の版画や水彩作品で用いられ、影や背景にふんわりとした深みを与えるのが特徴です。

表面から塗る彩色とは違い、紙の質感を生かした繊細な表現ができるため、職人技とも言える緻密な作業が求められます。

その他のよく見かける版画用語

・エディションナンバー

版画には同じ版から複数の作品が刷られますが、それぞれに「何枚目なのか」を示す番号がつけられます。
これがエディションナンバーです。

例えば「10/100」と書かれていれば、100枚刷られた中の10枚目という意味になります。
限定枚数の証でもあり、作品の価値を示す大切な要素です。

・サイン(署名)

版画の下部にある作家のサインは、本人が仕上げを確認した「完成品」である証拠です。
直筆で書かれることが多く、サインの有無で作品の印象も変わります。

サインを見ると、作家との距離がぐっと近づくような気がしますよね。
まさに、作品と作者をつなぐ最後のひと筆です。

・プルーフ(試し刷り)

プルーフとは、版を本番前に試し刷りしたものです。
作家が色合いや線の出方を確認するために刷るため、枚数も少なく、希少な存在です。

「AP(Artist’s Proof)」と記されていることが多く、作家自身が確認や保存のために持つ特別な作品といえます。

・マット/額装

版画作品を展示する際、紙のままではなくマット(台紙)や額に入れて飾るのが一般的です。
マットは作品とガラスの間に空間を作り、湿気や汚れから守る役割を持ちます。

額装のデザインによって作品の印象も変わるので、展示方法も鑑賞の楽しみのひとつです。

版画鑑賞のポイント—技法を知ると見え方が変わる

用語や技法を知ることで、単に「きれい」だけではない作品の奥深さが見えてきます。
たとえばプレートマークを探したり、色の重なりから見当の正確さを感じたりするのも楽しいですよ。

作家がどんな手順で作品を仕上げたのかを想像すると、版画鑑賞がいっそう魅力的な時間になります。

まとめ:用語を知って作品の奥深さを味わおう

版画の世界には、独自の技法や用語がたくさんあります。
それを少し知るだけで、作品の魅力がぐっと広がります。

次に美術館で版画を見かけたときは、ぜひ「これはどんな技法かな?」と小さな発見を楽しんでみてくださいね。

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