はじめに
日本のアニメーション文化の象徴とも言えるスタジオジブリ作品。
その制作過程で実際に使われた「セル画」は、今や世界中のコレクターが熱視線を送る至高のアートピースです。
しかし、人気が高まれば高まるほど、残念ながら精巧な偽物や、価値を誤認させるような複製品が市場に出回ってしまうのも事実です。
「大切にしていたコレクションが、実はカラーコピーだった……」なんてことになったら、もう目も当てられませんよね!
そこで今回は、数多くのアニメ資料を見てきた査定のプロの視点から、 本物のセル画とそうでないものを見分けるための「極意」を伝授します。
まずは基本を知ろう!セル画の「種類」
一口に「セル画」と言っても、実はいくつかの種類が存在します。
ここを混同していると、査定額に大きな差が出てしまいますので整理しておきましょう。
制作セル(プロダクションセル)
これぞ本命! 実際にアニメの撮影で使用された、世界に一枚しか存在しない「本物」です。
映画のあのシーン、あの瞬間がそのまま手元にあるなんて、想像するだけでワクワクしてきませんか?
まさにロマンの塊です!
複製セル画(リプロダクション・セルアート)
公式に販売された観賞用の商品です。
スタジオが監修し、リトグラフやシルクスクリーンなどの技術で作られています。
これらは「偽物」ではありませんが、制作に使われたものではないため、評価基準は美術品やグッズに近くなります。
認定書やシリアルナンバーが付いていることが多いのが特徴ですね。
偽物・ファンアート
問題なのがこちら。
カラーコピーをセルに貼り付けたものや、ファンが独自に描いたものが、 あたかも「本物」として流通してしまうケースです。
次にお話しするチェックポイントを使って、これらをしっかり見極めていきましょう。
プロはここを見る!真贋鑑定のチェックポイント
【最重要】裏面を見ればすべてが分かる!?
セル画の最大の特徴は、透明なシートの「裏側」から絵の具(アニメカラー)で彩色されていることです。
そのため、セル画を裏返して光に当ててみてください。
本物であれば、絵の具の厚みによるボコボコとした立体感や、筆の運び(ブラシストローク)が見て取れます。
逆に、偽物の多くはプリンターで印刷されたものなので、裏面も表面と同じように平らで、インクが均一に載っています。
また、絵の具の「匂い」もポイントです。
古いセル画特有の、ちょっと酸っぱいような匂い(酢酸臭)がすることがあります。
これは経年劣化の証でもありますが、同時に時を経た本物であることの証明の一つにもなり得るのです。
「トレス線」の魔法
キャラクターの輪郭を描く線を「トレス線」と呼びます。
制作当時のセル画は、カーボン紙のようなもので転写したり、ハンドトレスといって手作業で線を描いたりしていました。
そのため、線をよく見ると強弱があったり、わずかなカスレがあったりします。
今のデジタル印刷で作られた偽物は、線があまりにも綺麗すぎて、逆に不自然なんですよね。
「人間味のある線」こそが、本物の証なんです!
「タップ穴」の有無を確認せよ
セル画の上部には、動画用紙や背景と位置を合わせるための穴が開いています。
これを「タップ穴」と呼びます。
通常は3つの穴が開いているのが一般的です。
実際に撮影に使われたものであれば、この穴を使って固定していたはず。
もしタップ穴がない場合や、形がいびつな場合は要注意です。
ただし、額装するためにカットされている場合もあるので、穴がない=即偽物というわけではありませんが、重要な判断材料になります。
査定額が跳ね上がる「奇跡の条件」
本物であることは大前提として、ではどんなセル画がより高く評価されるのでしょうか?
ここからは少しテンションを上げて、コレクター垂涎の「激アツ」ポイントをご紹介します!
人気作品と「ジブリ最後」の伝説
やはり『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』といった初期の名作は不動の人気です。
そして忘れてはならないのが『もののけ姫』!
この作品は、ジブリがフルデジタル制作に移行する前の、最後の長編セルアニメーション作品と言われています。
つまり、これ以降の作品には原則としてセル画が存在しないんです。
「時代の最後を飾った傑作」という歴史的価値も加わって、その熱量は凄まじいものがありますよ!
「目開き」と名シーン
キャラクターの表情も超重要です。
一番人気は、やはり目がぱっちりと開いている「目開(めあ)き」のカット。
逆に、瞬きの瞬間の「目閉じ」や、後ろ姿だけのカットは、評価が少し落ち着く傾向にあります。
そして、誰もが知っているあの名シーン!
パズーとシータが手を合わせる瞬間や、キキがデッキブラシにまたがる瞬間など、 映画の感動が蘇るようなカットは、もはや美術品の域に達しています。
奇跡の「背景付き」
セル画は通常、キャラクターのみが描かれた透明なシートですが、 稀に撮影に使われた「直筆背景画」がセットになっていることがあります。
しかも、そのセル画と背景がぴったり合致する(合致背景といいます)セットが見つかった日には、もう震えが止まりません!
アニメの世界がそのまま切り取られたような完全な状態。
これこそコレクターの到達点と言えるでしょう。
まとめ:愛を持って接すること
セル画は、アニメーターの方々が魂を込めて一枚一枚手描きした、汗と涙の結晶です。
工業製品ではなく、人の手が作り出した「生の芸術」だからこそ、真贋を見極める際にも、その筆致や質感に注目することが大切です。
もしお手元にセル画があるなら、湿気や直射日光に気をつけて、大切に保管してあげてくださいね。
それは単なるフィルムではなく、日本のアニメ史そのものなのですから。

